Posts Tagged ‘書評’

[本] ジョエル オン ソフトウェア / Joel on Software

2009.03.11 水

Joel on Software
Joel on Software

Joel Testで有名な元MSの開発者である著者のソフトウェア開発にまつわるあれこれを綴ったエッセイ的内容。

もちろん現役のエンジニアなんで、コードの書き方にも触れてはいるものの、全体を見れば、システム開発に関するプロジェクトマネージメントの方法、開発プロセスのあり方、仕様書の書き方、採用からチームビルドの方法といった感じで、読み物として非常におもしろいので、非エンジニアな方でも楽しめる。
文体の好き嫌いはあるだろうが、これは彼の言うところ、退屈な文章に興味を持ってもらえるような工夫だろう。
ソフトウェア開発に関わる開発者、マネージャー、設計者の姿が滑稽に情緒豊かに描かれている。読みながら上司や同僚を思い浮かべて、”あるある”とうなづく事になる。

実際には、彼がどんな人間でどんな仕事をしたノかは知らないし、エンジニアとしてのスキルがどうなのかもしれないが、彼の持つ視野の広さは、僕がシステムエンジニアの資質として非常に重要だと感じる。(自分の知る限りこういうエンジニアは数少ない)

たいていのステレオタイプなシステムエンジニア像としては、実際にシステムを利用するのユーザの事など一切考えず、目の前のコード対峙しつづける。システムの振る舞いについて質問しようものなら、APIがFalseを返していますので、これは正常な挙動ですなんてエラーメッセージみたいなメールしか返さない。こんなステレオタイプなプログラマとやり取りしていると、同じ世界にこんな人間がいるのか?という疑念すら生まれてくる。

システム(ソフトウェア)を使うユーザをの事を考え、ビジネス戦略を理解した上でコードを書く、エンジニアなんてものが存在するのだろうか、ワォ、クール!

社会人としてウェブの制作会社に就職したとき、いきなり実戦に放り込まれたのはいいが、その時は、サイトマップのすら存在も怪しく、ワイヤーフレーム、ましては要求(機能)仕様書なんてのは、そのチームには存在していなかった。そんな時、仕様書ってこう書けばいいのかというのを教えてくれたのでが、日本語に翻訳されたJoel on Softwareだった。

その仕様書に章にも書かれているが、ユーザーが何を実現できるのかというユーザー視点や、単にユーザーではなく、ユーザーに名前をつけて、個性や背景をもった人間として、システムを設計するいわゆるペルソナ的な考え方も紹介されている。

ただ、彼のバックグラウンンドは商用ソフトウェアの開発者なので、ここで書かれているすべてがウェブサイトの開発に当てはまるというとそうでもない。マイクロソフトの話はもういいよと思う時もたまにはあるがどのような立場であっても、どんな形態であってもシステム開発に携わる人間なら一度は読んでおいた方がいいかもしれない。
ということで、★★★★☆

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[本] ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」—5つの段階で考えるユーザー中心デザイン

2008.12.09 火

ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」
ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」―5つの段階で考えるユーザー中心デザイン

先日、取り上げたSubject to Changeの書評でも少し触れましたが、Adaptive Path社のJesse James GARRETTが書いている『The Elements of User Experience: User-Centered Design for the Web 』の日本語訳。訳者はソシオメディアの人々で篠原さんがあとがきを寄稿されてます。

英語では2003年に出版されており、日本版も3年まえの2005年と若干古い本ではあるが、本書の核として語られるJesse James Garrett’s 5 Planes Modelは、現在でもウェブサイトを構築するためアプローチ、もしくは考え方としては基本的に正しい。


Jesse James Garrett’s 5 Planes Modelを視覚化すると以下のようになる。

Jesse James Garrett’s 5 Planes Model

簡単に概略だけ書くと、ウェブサイトは以下の5つのレイヤーで構築されていて、それぞれのプロセスで適切なアウトプットが求められる。

  1. Surface(表層)
  2. Skeleton(骨格)
  3. Structure(構造)
  4. Scope(要件)
  5. Strategy(戦略)

例えば、Strategyでは、戦略・実施計画書であったり、Scopeでは要求仕様書であったり、Structureではサイトマップであったり、Skeltonではワイヤーフレームだったり、Sufaceではデザインカンプだったり。
プロセスという意味合いで言えば、もちろん最後には実装を伴い、テンプレート分のPSDができたり、HTMLができたりする。

詳細については、Jesse James GARRETTのサイトにオリジナルが掲載されていて、PDFもダウンロードできるので、一読してみるといい。

この本に書かれている内容は、非常に理想的なもの。実際に著者自体が語っているが、これらのプロセスを十分に踏まえて進行する事ができるプロジェクトは稀で、Information Architectureが当たり前の様に考慮され、専門のInformation Architectsが存在する組織というのはほとんどない。

実際に日本でウェブサイトの構築に関わっている大半の人は、プロジェクトの管理をしながら、サイトの設計を行い、取材を行いテキストをおこし、時にはフォトショップを開いて画像を編集したり、HTMLを開いてタグを編集している、そんな業務を一人または、少人数でこなしているかもしれない。

クライアントはユーザーなんて言葉もしらず(言い過ぎ?)、最大のステークホルダーは上司で、公開全日になって仕様変更を突きつけられたり、と行った事も日常茶飯事かもしれない。

もしそんな状況に置かれているのあれば、まずこの本を手に取ってみるといいかもしれない、まず自分の仕事は”何”を作る事で、何を考えて進めなければならないかというヒントにはなると思う。
と、こんな偉そうな事を書いていても、最近難航するプロジェクトの中をどう進めればよいか思案中で、とりあえず本棚から引っぱり出して、再読した自分が言うので、説得力はあまりないかも。

明日の仕事にすぐ役立つというわけではないかもしれないが、ウェブサイト作っている人なら一読の価値ありということで★★★★☆。

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[本] Subject to Change

2008.12.08 月

Subject to Change
Subject To Change -予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る

アメリカのUX系デザインファーム?のAdaptive Pathの中心メンバーによる共著で、成功する製品やサービスを生み出すために必要な視点、組織体制、実践すべきプロセスが包括的に語られている本。

IA(Information Architecture)に関する仕事をしている人ならば、Adaptive Pathという会社の名前は聞いたことがあるかもしれないが、顧客の体験(User Experience)を主眼において、ウェブサイトやソフトウェア、製品を作るためのコンサルティングをしている会社。業界的には老舗でJesse James GARRETTなど日本でも名前の通った人も多い。
まぁこんな説明より、DESIGN IT!のAdaptive Path社を紹介したページの方が間違いなく分かりやすいので、参照してください。

そんな彼らが創業してから、現在に至るまでビジネスを構築してきたエッセンスが込められた内容だと思う。
製品(サービス)を作る上では、顧客が感じる体験が最も重要な要素であり、顧客体験をデザインする為に組織をデザイン志向でドライブして行くという事、タイトルが示すとおり変化し続ける世界に対応する為にアジャイル(軽量な)プロセスが求められるという事。
一言で感想を言うならば、書かれている内容は圧倒的に正しい。ただそれを実現するのも圧倒的に難しい。

実際にAdaptive Pathが作成した自分のいる会社に関する調査報告と簡単な提案を含んだレポートを読んだ事があるが、きわめて正論で反論の余地はない。ただ今も実現できていない。
一つ具体例を挙げれば、”(システム的に)製品のカテゴリ構造は世界で統一すべきだ”というメッセージ。至極当然のメッセージだが、同じ製品であっても、日本と中国ではマーケティングにおける位置づけが大きく異なることはよくある。
例えば日本では大衆車と言われるカローラは、ブラジルでは高級車とか。(トヨタの人ではないので正確ではないかもしれない)

全体的な印象も、ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」などのサイト制作者向けというよりは、プロダクトマネージャー、マーケティング担当者などのクライアント側の人が読むべきいわゆるビジネス書的な性格のほうが強いと感じる。

最近仕事の進め方であったり、プロジェクトゴールで悩んでいる自分にとっては意味がある本ではあるが、それはあくまで大きな方向性を再確認させてくれるという意味が大きい。

ただ、日々の仕事に役立つHowtoももちろん含まれている。具体的に一つ心に残っている箇所をあげるなら、ユーザ行動と調査結果は、調査部門の担当者だけが知っていても意味が無い、それらはステークホルダーで共有され共通認識となってこそ初めて意味をなす的なニュアンスだろうか。
まさにユーザー調査をしている自分にとっては頭が痛いところ。

ということで、諸々押し並べて、★★★★☆

最後に何となく、勝手な印象だが、この本の真意はクライアント側の人々に自分たちの存在意義を訴えるそんなことなのかもれないと思った。

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